女の子が転びそうになったときあなたはどうするのか?

思考が介入する余地すらない、刹那。

 

隣にいるあなたは一体どうするのだろうか

 

三日前のことである。

 

お昼頃だね、ということから始まった連中の話は食堂へ食べにいこう

 

ということで帰結した。

 

そもそも大学生を経験したものであるなら、誰しも理解できることだが、

 

基本、学生は一日のスケジュールは自分で決める。

 

授業やバイトとの兼ね合いもあるので、取捨選択をしなければならない。

 

お昼ご飯をたべるのもお腹の減り次第と自由気ままである。

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※実際のものを8倍ほど美化しております。


 

食堂までのルートで中庭を通らなければならない。

 

ことが起きたのはその道中のことだ

 

友人たちとたわいもない話しで盛り上がる一行。

 

その一人、リスを擬人化したような愛嬌のある女の子が身軽に縁石の上を渡っている。

 

視界の端にいる彼女がいやに目をひく。

 

違和感を確かめようと視線を移したとき、

 

既に彼女は体制を崩して、遠くなる空を見つめている。

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あぁ、足をすべらせたんだな、と認識したときにはもう一刻の猶予も許されない。

 

あなたはそんな状況下、果たして人間というものはどういうアクションを起こすのか。

 

一部の嗜虐趣味の人間以外はもちろん、彼女を助けようとするだろう。

 

宙に舞う手をつかむか、少し格好つけたいと思うなら、日ごろごろごろして蓄えられた余剰エネルギーを遺憾なく発揮することで、野獣のごときスピードで背後に回り込み、

「…ふぅ、お転婆だな、こねこちゃん」などと到底、その容姿では…と落胆される言動を吐き出せれば、上出来であろう。

 

しかし、人間いざその場に立って見ると、これがなかなか難しい。

 

そのような正攻法を実行できる人間ではなかった。

 

かと言って指を加えて傍観しているほど薄情な人間でもない。

 

では、僕はどうしたか

 

あまりにも一瞬すぎて、自身ですら記憶できなかった。

 

意識がはっきりし始めたとき、僕は四つん這いで地面を見つめていた。

 

結果論、僕は「椅子」になっていた。

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膝立ちで手を地面に下ろすことで四本の足となり、座る部分と化したような僕の背中には

 

彼女の手が乗せられていた。

 

一秒にも満たない刹那に起きた、この出来事。

 

依然として、この土下座にも近しいこの状況に感情が追いつかない。

 

「ありがとう…?」

 

「どういたしまして…?」

 

額面だけの言葉の応酬をして、静かに僕は立ち上がった。

 

読者達も低確率でこのイベントに逢うことがあるかもしれない。

 

その時にはどうか、悔いのないように行動してほしい。

 

これさえロマンチックにできれば、恋情を生み出すことさえ可能だ。

 

助けたいという気持ちが先行する余り、人間椅子になり、何とも言えない雰囲気が流れることのないよう祈ろう。

 

これは思考の介在する余地のない、刹那の出来事だから。

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